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「おっ?」
玄関に出向いたホイットニーの目に留まったのはセミロングのサラサラの髪を風になびかせた20歳前後の女性。その爽やかさをスカイブルーのミディスカートが際立たせている。白い歯にぱっちりした目もとがとても印象的な顔立ちだ。
「マーダの神殿に……」
ホイットニーがそう行っている最中、セーファスがホイットニーのもとへ勢いよく駆け寄ってくる。そのとき、
「うぎゃっ!」
ホイットニーはそう叫ぶと同時に右側へと突き飛ばされた。
「ご来所ありがとうございます。マーダの転職相談所へようこそいらっしゃいました」
セーファスは自らが突き飛ばしたホイットニーの方など見向きもせず、右手を振り下ろしながらそう言って最敬礼をする。
「立ち話も何ですから、どうぞこちらへ」
セーファスはそう言ってその女性を相談室へと案内した。その後相談室にその女性を通すと休憩所にそそくさと出向き、テーブルの上の花瓶を相談室に持ち帰る。そして人差し指をくるんと回して魔法をかけ、そこにバラの花束を咲かせた。
「よかったら、こちらもどうぞ」
セーファスはそう言ってホイットニーがア◯ゾンから取り寄せたままどおるを女性に差し出す。女性は軽く一礼をすると、口元へとそれを運んだ。
「あの……もしかして……」
セーファスはそう口に出したが、続きの言葉をすぐに引っ込めた。
「え?」
「あ、いや。何でもありません。お名前は、何とおっしゃるのですか?」
優しい口調でセーファスがそう問いかけると、
「私、マコトって言います。以前は踊り手とメイドをしていました。今は……ただの学生です」
マコトは緊張した面持ちでそう自己紹介する。
「やはりなるほど。ではマコトさんがなりたいのはどの……」
「待てぃ!それはわしの仕事じゃ!」
相談室のドアからホイットニーの声が聞こえてきた。
「セーファスよ。勝手にわしの台詞を奪った上にわしの大事なままどおるを……」
「マコトさんがなりたいのはどのご職業ですか?」
セーファスは構わずマコトに問いかける。どうやら視覚も聴覚も目の前のマコトに奪われてしまっているらしい。
「なりたいというより……私、もう一度メイドに戻りたいんです」
そう答えるマコトの表情には悩みの色が見え隠れしていた。
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