約束

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約束

「戻りたいんですか?迷うことなんてないでしょう!戻りましょう!スキル的にも素質的にも問題はありません。早速やりましょう大長老、 お願いします」  セーファスが鼻息荒くホイットニーを呼んだとき、 「ちょ、ちょっと待ってくださいセーファスさん!」  マコトはセーファスを制止した。 「あ、すみません……」  セーファスは我に返って軽く頭を下げる。 「私にはそう簡単に戻れない事情があるんです。だから迷ってるんですよ……」  マコトはそう言うと、事の経緯を話し出した。  マコトがメイドカフェ界隈やダンスの動画配信の世界から姿を消したのは今から1年近く前のこと。家庭の事情もあれば、フォロワーや客との人間関係の悩みなどもあり、それらが複雑に絡まりあった故の撤退だった。後ろ髪引かれる思いが無かったといえば嘘になる。しかし一度卒業すると決めたからには後には引かない、マコトはそう固く心に決めていた。 「私、Twitterのフォロワーさんが2000人いるんですけど、その人たちに出戻りは絶対にないってすでに宣言してるんです。だから、私がメイドに出戻りしたら2000人との約束を破ったことになります。そんなことをしていいものなのか……最後だって言葉を信じて高いお金を払ってシャンパンを卸してくれた『ご主人様』も沢山いるんです。彼らを裏切ることにならないかな?って。それに、これは私自身との約束でもあるんです。いくらご主人様への『お給仕』やダンスをすることにやりがいを感じていたとしても、私自身との約束を破ってホントにいいのかな?と思って……」 「いや、絶対大丈夫ですって!ほら!その、言うじゃないですか。可愛いは正義だって!」  セーファスは必死に説得を試みるが、マコトの表情は晴れないままだ。そのとき、ふとセーファスの左肩がポンと叩かれた。肩を叩いたのはホイットニーだった。
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