6人が本棚に入れています
本棚に追加
予想は的中し、二時を回ってもほとんど暇がなかった。昼だけは適当に取ったが、仕事を上げだしたら切りがないのだ。
「白井さん、休憩取った? 私仕事変わるよ」
役員の一人である女生徒が、駆け回る私に気付いたのか声を掛けてきた。有り難いとは思ったが、任せてしまうことに不安がある。
「あ、えっと大丈夫です」
「え、でも折角の文化祭だよ? 大丈夫?」
「……全然大丈夫です。先輩に呼ばれてるので行きますね」
「頑張るね、ありがとう」
返事替わりに、にっこり笑ってみせ、大声で苗字を呼んでくる先輩の元へ駆けた。浮上する思いに蓋をして、はつらつと声をかける。
本当は、わざわざ忙しくしていた。なんて口が裂けても言えそうにないな。
「先輩、用件なんでした?」
「白井、手空いてるか?」
「はい、全然」
「だったら次は──」
「えっ」
告げられた用事、それは体育館への荷物運びだった。
軽い荷物ではあるが、心が重かった。
最初のコメントを投稿しよう!