アオハル メロディー

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 最終的に、私が下ろされたのは舞台裏だった。バンドメンバーは物珍しげに私を見ていたが、数秒で状況を理解し和んでいた。 「あの、黒川くん……?」 「一緒に歌いましょう!」 「はい!?」  潔い笑顔の黒川くんとは裏腹に、私は狼狽える。なぜ、そうも清々しく行動に出られるか、一度心理分析でもしたいものだ。 「一回だけ! お願いです、これで駄目だったらもう何も言わないので!」  顔の前で両手を合わせた黒川くんは、真剣そのものだった。幾ら憧れだと言えど、他者である私にこうも真っ直ぐぶつかってくる人など、今まで一人もいなかったのに。 「それ、本当だね……?」 「じゃあ!」 「一曲だけだからね?」 「やったぁ!」  黒川くんの勝手な行動には慣れているのか、バンドメンバーは何だか楽しげだ。即興で曲リストの変更まで始めている。 「じゃあ、後半スタートするぞ!」  全員に掛けた合図と共に、司会による放送が流れる。生徒達の歓声が、舞台裏まで聞こえてきた。  緊張する。怖い。これが終わったあと、自分がどうなってしまうか分からなくて怖い。  でも、どうしてか口元は綻んでいた。  自ら講じた、掟を破ると言うのにね。
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