アオハル メロディー

3/18
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
 第一志望校に入学して、早二年半が経った。  一番気の緩むこの時期、周りの生徒は部に勤しんだり恋したり、それなりに青春を謳歌しているように見える。  ただ、それが私に当て嵌るかは別で、私は退屈で窮屈な毎日を過ごしていた。  ──休み時間の教室は、騒がしくて苦手だ。  教科書を読み込もうにも頭に入らない。音楽で耳を塞ぐことも出来ず、ただ喧騒に溜息を吐くしかない。  後方で、慌ただしく扉の開く音が聞こえた。相当力を入れたのか、耳障りな程の大音だ。ドンドンと大股気味の足音も聞こえる。 「あの、白井(しらい) 夏香(なつか)さんですよね!」 「?」  反応と同時に振り向くと、ちょうど席の真横に知らない男子が立っていた。  白井夏香とは私の名前で、高校に入ってからは誰にも教えたことがない。  はず、なんだけどな。 「えっと、どなたですか」 「俺、黒川(くろかわ) 春馬(はるま)って言います! 夏香さんは知らないと思うけど、同中です!」 「ああー……なるほど……」  簡単に辻褄が合わさり、一人頷く。この二年で、何回か同じようなことがあったものだ。  そして、その人たちには、決まって同じような話題を振られた。そう、 「あの、夏香さん! 軽音部に入ってくれませんか!?」 「……あ、いや、私歌捨てたので」 「えっ、えぇ!? 捨て……!?」 「早く戻らないとチャイムなるよ」 「あっ、本当だ! うわ、えっと、また来ます!」  音楽についての話題だ。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!