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翌日、また彼──黒川くんがやってきた。
確かに来るとは言っていたが、さすがに早すぎないだろうか。
黒川くんは空いていた前の席に座り、真っ直ぐに視線を向けてくる。
「夏香さん、考えてくれました?」
「だからね、私はもう歌わないんだって」
「えぇー、そんなこと言わずに歌って下さいよー」
「歌わない。何度言っても同じです」
「えぇー」
黒川くんが真剣ならば、真正面から向き合って伝えてみよう。そう思い、試してはみたが無駄らしい。
黒川くんは頑固者なのか、諦める様子を見せようとしなかった。
「チャイム鳴るよ」
「あっ、本当だ! また来ます!」
で、結局これだ。
今までと違うタイプの人間に困惑してしまう。けれど、どうしてかあまり苛立ちは無かった。
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