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更に翌日、またも黒川くんはやってきた。その次の日も、次の日も、何度拒絶しようともやってくる。そして部活に誘ってくる。
文化祭に近付くにつれ、そこにライブのお誘いも加わった。
「だから、歌いませんし行きもしません。私は勉強に身を捧げたの。分かって貰えない?」
「分からないです! それに勉強ばかりだと息が詰まりません!? たまには羽根を伸ばしましょうよー!」
「……まぁ、それは……。じゃなくて!」
黒川くんは頑固者で、しかも曲者でもあるらしい。無邪気な笑顔からは奔放さも伺えて、私とは真反対だと思える。
彼を説得するのは大変そうだ。ここまで手こずったのは初めてである。
逆に言えば、ここまで諦めない人間も初めてだけれど。
「……もうバンドは出来上がってるんでしょ? 文化祭にも出るみたいだし、私要らないじゃない。本番明日なんだから、メンバーと打ち合わせとかした方が良いんじゃない?」
「まぁ、出来てるけど、俺は夏香さんが良いんですよ! それに打ち合わせは放課後でいいです」
「なんで、そこまで私なの?」
「えっとですねー」
意気揚々とした声を遮るように、担当教師が入ってきた。イコールで授業開始を悟り、黒川くんが慌て出す。
「明日、ライブ見に来て下さいね! 午後二時から体育館でやるんで! とりあえず見るだけでも良いんで!」
それだけを残すと、黒川くんは急ぎ足で去っていった。
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