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「えー、今日は重大発表があります! なんと……私のダーリンを紹介しまーす! ヒロくんでーす、よろしくー!」
そんなふうに言って妹がヒロをこの家に連れてきたのは、先月のことだ。
オレも、もちろん両親も、腰を抜かすほど驚いた。それほどにヒロは、その時のこの一家にとって、異質な存在だったからだ。
ヤツの方も、さぞかし戸惑っていたに違いない。
トレードマークの真っ黒なコートをまとったヒロは、声もなく、ただオレたちを睨むようにじっと見つめた。オレは、その目つきの恐ろしさに背筋が寒くなった。
さっそく、両親は妹をあれこれと問い詰めた。どこで出会ったのか、なぜ相談もなくいきなり家に連れてきたのか、おまえが良くてもヒロが私たちを気に入ってくれなかったらどうするつもりか、などと。
しかし妹は、それぞれの質問に対し、「友達に紹介してもらった! だって、一目惚れしちゃったんだもん! 大丈夫、お父さんもお母さんも、ゆっくり時間をかけて仲良くなればいいから! ヒロくんのこと、嫌いじゃないでしょ?」と、あっけらかんと答えた。
両親はまだしばらく心配事や文句を並べたてていたが、やがて静かになった。そう、確かに二人は、決してヒロのことが嫌いではなかったのだ。
はたして、両親とヒロが打ち解けるまでに、それほど時間はかからなかった。
それから日が経つにつれ、ヒロは妹だけでなく、両親の前でもすっかりリラックスした姿を見せるようになり、しばしばキッチンでオレたち一家と共に食事するようにもなった。
だが、黒ずくめのヒロのあの目つきにすっかりビビってしまったオレは、ただ一人、家族の中でアウェイ状態に置かれることになっていった。
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