ヤツはオレには甘くない

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ヤツはオレには甘くない

その夜、シャワーを浴びて部屋に戻ると、なんと、ヒロがオレのベッドの上で堂々と寝ていた。 厚かましくも妹にはダーリンと呼ばれているが、兄のオレに対しては全く愛想のない、あのヒロのヤツが。 「うおっ……」 オレは、思わず妙な声を漏らしながら、慌てて後ずさった。 いったいどうしたんだ、コイツ。昼間だって、オレの部屋に勝手に入ることなんか絶対にないのに。 妹の部屋と、間違えでもしたのか。今夜はそんなにも眠かったのか。 長々と無防備に横たわるヒロの姿を前に、オレはしばし、呆然と立ちつくした。 だが、部屋に入られたことへの怒りがあるわけではなかった。 むしろ、その逆だ。オレの胸は、喜びに高鳴っていた。 そう――ついに、チャンスがやってきたのだ。 ついに、この腕で、ヒロを抱きしめることができるかも知れない……! ヒロの方は知るはずもないが、オレはずっとそのことを密かに思いつづけていた。 凍えるような寒い冬の夜、妹の胸からヒロを奪って、このベッドの中で抱き合い、朝まで温め合うことができたら……と。 恋い焦がれるようなその願いが、今夜、天に届いたのだろうか。 男同士だからって、イヤだとは言わせない。
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