よちよち歩き

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よちよち歩き

 あの子、一人で大丈夫かな。  コンビニの駐車場に、一歳から二歳くらいの間らしき赤ちゃんがいた。  男の子か女の子か定かでないけれど、随分と活発で、よちよち歩きながら元気に駐車場内を動き回る。  最初は単純に『元気な子だなぁ』と思ったけれど、よくよく見れば、周囲に親や保護者らしき人の姿がない。  ここ、駐車場だよ? もう少し大きな子ですら放置したら危ないのに、あんなよちよち歩きの赤ちゃんを放っておいたりしたら、うっかり入ってきた車にはねられちゃうかもしれないよ?  不安でそわそわした私の気持ちに応じるように、駐車場に一台の乗用車が入ってきた。位置のせいか、赤ちゃんには気づいていないようで、止まる様子がない。  反射で体が動き、私は車の前に飛び出した。  小さな体を抱え上げ、車の前を突っ切る。  幸い速度はほとんどなかったから、私は余裕で赤ちゃんを救うことに成功した。 「大丈夫ですか?!」  車から運転していた人が飛び出してきて、私と赤ちゃんの様子を覗う。その人に平気ですと答える私の腕の中で、赤ちゃんが左右に首を振った。  どうしたのだろうと、私が声をかけるよりも早く、今の今まで確かに腕に抱えていた赤ちゃんは姿を消した。  呆気にとられながらも、目の前にいる人を覗うと、相手も同じように呆然としていた。
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