傷痕

3/7
前へ
/7ページ
次へ
彼女は同学年の生徒から有名だ。容姿端麗で優秀で性格も良く、偏見や差別もない。誰に対しても分け隔てなく接することができる。更に、彼女は恋愛に関しても、誰の好意も全て受け入れてしまうような聖女であった。 醜悪な容姿をしている男も、性格が捻くれた男も、悪い噂を持つ男も、年上も年下も関係なく、誰からの告白も受け入れてしまう。 それでも彼女は浮気性はなく、完全に関係を断ち切ってから、次の男と付き合い始めるため、痴情の縺れは一切聞いたことがない。 保健室に入り浸るようになったのは最近だ。しかし、三ヶ月前から、約一週間毎に一度は訪れる頻繁さ。どうやら、現在付き合っている男は、年上の会社員で、性行為の度に暴力を振う性癖の持ち主らしい。 毎度、彼女の身体は打撲や噛み跡などが多数あり、酷い時は骨にヒビが入っていたこともあった。週末に男と会う度に新しい傷跡ができ、治る傷も治らない状態。質が悪いことに、男は服で隠れるところばかりを狙っている。 やがて、届きにくい背中の無数の傷を治療してもらいに、初めて保健室に訪れた。幸い、その日、先生は毎週の会議に出ており不在であった。代わりに留守を任されている私が彼女の治療をすることになった。彼女も、先生に言えば身内にも伝わってしまっていただろう、と私が治療することを良しとした。だから、この日のことは、彼女と私の秘密。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加