春の桜の頃

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「だから解放してあげるって言ってんの!無理に付き合ってくれなくていい!」 「誰も無理なんて言ってない!」 「でも、好きとも言ってない!」 櫻子がグチャグチャの顔で振り向いた。 そうだった。 私は好きだって言ってくれてる櫻子に甘えていた。 自分からは言わない、言えなかった。 遥のコトを知ってる櫻子に好きと言えば、遥の代わりになるのではないか、そうすれば櫻子を傷つけてしまう。 そんな事を考えてたら、何も言えなくなっていた。 会うのも、キスをするのも、一緒に寝るのも全て櫻子からだった。 「信じてもらえないかもしれないけど、、、」 菜月は立ち上がり、グチャグチャの櫻子を抱きしめた。 「ちゃんと言えなかった。変わり身の早いやつって思われたくなかった。」 声を殺して櫻子が泣いている。 櫻子を泣かしたのは私だった。 「櫻子、、、私はあなたが大好きです。さっき、振られたばっかりだけど、私と付き合ってください」 櫻子の耳元で初めての告白をした。 菜月の背中に手を回してきつく抱きしめ返してきた 「遅いよ、早く言ってよ、、、」 櫻子が声を出して泣き出した。 「ごめんね。ちゃんと好きだったよ?」 少し2人の間をあけて、菜月は櫻子にキスをした。 また更に泣き出してしまう。 「もう、、、いい加減泣き止んでよ?」 「だって、、、2年越し、、だよ?」 「、、、そっか、随分待ってくれたんだね。」 また唇を重ねる。 2年分の想いを受け取るつもりの深い深いキス。 この公園で始まった。 この先、どうなるかわからない。 幸せなゴールがあるのかもわからない。 まだ、この国は私たちのカタチを理解してくれる社会ではない。 それでも、少しづつ上むいて前に行くしかない。 「菜月、ちょっと待って。」 菜月は立ち止まる。 背中にぶつかる櫻子。 「急に止まらないでよ、鼻ぶつけたじゃん。」 「もう追いかけなくていいよ。」 「え?」 菜月は櫻子の手を握り一緒に並んで歩く。 「おんなじスピードで行こう、並んで。櫻子より、もう先に行かない。」 櫻子は嬉しそうに微笑む。 「私が先行っちゃったらどーするの?」 少しニヤニヤして菜月を見る。 「追いかけるよ。今度は私が。」 櫻子が満足気に菜月の腕に絡みついてくる。 夜桜が満開でいつまでもふたりを見ていた。
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