1章

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二人は本気で世界を目指していた。今はハンドルにお気に入りのバンドのシールを貼ったVX-2000でしか撮影できないが、いずれは36mmフィルムに望遠鏡のように長いレンズを付けたカメラで撮影し、監督用の椅子に腰掛けアクションと叫ぶことを、10年後の自分達と思い描いていた。そのためにはこのコンクールで大賞を取り、大学で映画を専攻しないといけない、すべての未来への道は繋がっているとさえ考えていた。 「じゃあ、すぐ書き上げるから、常田は地底人らしい演出を考えておいてよ。」 「らしいってどういうのだ?」 「たとえば・・・モグラ語を分かるとか?」 「いや、きっと光に弱いからサングラスをしていて!それから肌も焼けやすいから日焼け止めをいつも持っているんだよ。で、肌も真っ白で、そのくせマントルに近いから意外と暑いのには強くて!それからそれから・・・!」 常田はノートを取り出して次々にアイディアを殴り書きしていた。止まるところを見せなかった。カバンにはぐちゃぐちゃになった進路調査の用紙と潰れた煙草の箱が見えた。 「常田、お前進路どうすんの?」 「芸大。」 「さっすが。」 「それしかないっしょ。」 顔を上げることなく、常田は宮元に返事を返した。そしてペンの進撃が突然止んだかと思うと、常田はカバンを漁ってトイレといって立ち上がった。部室のドアまで来て常田は振り返り宮元に笑顔を見せた。 「宮元、すげえもん作るぞ。」 宮元がはにかみ返すと、常田はそのまま部室を出て行った。 夢はそこで途切れた。
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