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選考作業は深夜まで続いたが終わらなかった。既に誰一人いなかったが、それでも宮元は今日中に終わらせなければいけなかった。明日は作家先生を交えた選考会がある。ここまでに5作品を決めなくてはいけないのだが、最後の1本について彼の中に最後の決め手がなかった。残りの作品は編集部内でもほぼ同じ評価。どれを残しても変わらなく思えるが、4本のみとするのも若手のチャンスを奪うことになる。責任もって推薦する1本を探すため、彼は改めて応募原稿に目を通し始めた。
つまらない、ありきたり、華がない…。いくら読んでも同じような感想しか出てこなかった。
没、没、没…。何度選考しても同じだ。いくらやっても新しいものなんて生まれない。
「こんなの、俺だって書けるよ。」
宮元のつぶやいた声は静まり返った会議室に、怖ろしく冷たく響き渡った。
だからお前はこうなったんだろ。
常田の声が聴こえた気がした。
宮元はまぶたを閉じてみた。
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