3章

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 ああ何もない  泥の中で眠っているようだ  明日ミサイルが街に撃たれればいいのに  明日別の世界にいればいいのに  明日国会が爆発すればいいのに  明日街から人がいなくなればいいのに  明日なんてなければいいのに 「じゃあ、明日を三択から選ばせてもらえる神様にあった主人公、とかどうだ?」 「たいした三択じゃないけど、悩んで選んで、変わろうとしてくんだよ。そしたら徐々に地底人の彼女と心を開けてさ。そして彼は地底人と共に地底に向かうんだ。そしたら神様の力は働かない、だから彼は明日が分からなくなった。でも彼女、モグラ女がいるから前に進もうと思うんだ。」 「題して、光を求めるモグラ、だ。」  なんでお前の才能は枯渇しないんだ  なんでお前は絶望しないで前に進めるんだ  なんでお前はこんなに俺を期待させるんだ 「といっても俺は文才がねえ、だから宮元、お前に書いてほしいんだ。」  あの日、俺が嫉妬と絶望と羨望と重圧と煩悩と不安と怠惰と恐怖のために応えられなかった作品だ  でももう今の俺には未来もない 「何言ってんだ。こっちだよ。」  声を聴いた  声の聞こえる方に向かって行った  モグラのように声の光を掘り進めていく 光の方から手が伸びてきた  ボロボロだがまっすぐにのびた指、決して筋肉質ではないが弱々しさは微塵もない手、アイツの手だ  俺はその手を取り泥の中から抜け出した 「今度は書いてくれよ。」  今度はハッキリと分かる  あいつの声だ
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