「王」と『死神』と『力』

5/5
前へ
/83ページ
次へ
そう言われてあたしは右手の手袋を外す。薬のせいだろう。右手は爛れていた。Mariaが傷を見て言う。 「痕は残らないと思う。十字の傷痕は残るけどね」 『それは残してくれないと困るんだよ…』 「澪が俺に逆らえない原因だからな。Maria、傷の手当てをしてやってくれ」 『その前に床と机の掃除が先じゃねぇか?何時までもこのままって訳にはいかないだろうよ。Master、それ持っててくれ』 そう言ってあたしは部屋の掃除を始める。医学書に紛れ込んでいた小型の盗聴機を掴むと、Kingに手渡す。 Kingはそれを見ながら呟く。 「これを仕掛けた所で「サイコパス」の会話など何の参考になるんだろうな?」 『さあな。珍しい奴がいるんだろうよ。「サイコパス」の会話をコレクションしている奴がいたら、それこそ「サイコパス」だ』 「澪が言うんだから間違いはないわね。まあ、詳細は後で出してあげるから」 床や机を掃除しながら話をする。綺麗に掃除が終わると、Mariaはあたしの右手を手当てし始めた。消毒をする手が痛む。ナイフで切りつけられるよりはましだが、一瞬顔が歪む。 「痛むの?そんなに深くはないわよ?」 『Masterに切られた傷の方が痛かったさ。今回、その場所がまた傷ついたからな…切られたみたいに痛むんだよ』 「澪も一応、常人と同じ所はあるんだな。安心したよ」 消毒をしてガーゼをあてて包帯を巻こうとしたMariaを止めた。白い手袋をすれば包帯の必要はない。 不意にベットの方から声が聞こえた。不審者が目を覚ましたようだ。
/83ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加