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そう言われてあたしは右手の手袋を外す。薬のせいだろう。右手は爛れていた。Mariaが傷を見て言う。
「痕は残らないと思う。十字の傷痕は残るけどね」
『それは残してくれないと困るんだよ…』
「澪が俺に逆らえない原因だからな。Maria、傷の手当てをしてやってくれ」
『その前に床と机の掃除が先じゃねぇか?何時までもこのままって訳にはいかないだろうよ。Master、それ持っててくれ』
そう言ってあたしは部屋の掃除を始める。医学書に紛れ込んでいた小型の盗聴機を掴むと、Kingに手渡す。
Kingはそれを見ながら呟く。
「これを仕掛けた所で「サイコパス」の会話など何の参考になるんだろうな?」
『さあな。珍しい奴がいるんだろうよ。「サイコパス」の会話をコレクションしている奴がいたら、それこそ「サイコパス」だ』
「澪が言うんだから間違いはないわね。まあ、詳細は後で出してあげるから」
床や机を掃除しながら話をする。綺麗に掃除が終わると、Mariaはあたしの右手を手当てし始めた。消毒をする手が痛む。ナイフで切りつけられるよりはましだが、一瞬顔が歪む。
「痛むの?そんなに深くはないわよ?」
『Masterに切られた傷の方が痛かったさ。今回、その場所がまた傷ついたからな…切られたみたいに痛むんだよ』
「澪も一応、常人と同じ所はあるんだな。安心したよ」
消毒をしてガーゼをあてて包帯を巻こうとしたMariaを止めた。白い手袋をすれば包帯の必要はない。
不意にベットの方から声が聞こえた。不審者が目を覚ましたようだ。
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