風が吹けば桶屋が呆ける

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「――あ~あ……もう、どうにでもしてくれ……」  俺は、目の前に広がる非現実的な光景を呆然と眺めながら、誰に言うとでもなくそう呟いた。  眼前では紅蓮の炎と黒煙に包まれた暗紅色の空を背景に、ビルよりデカイ巨大なザリガニやワニのような頭のカメが破壊され尽くした街を闊歩するかと思えば、街中を流れる小さな川にはクジラ大もある淡水魚が高波を起こしながら泳いでいる……。 「キャァァァァァァーっ…!」 「た、助けてくれぇぇぇ~っ…うわぁぁぁぁーっ…!」  その地獄絵図に響き渡る、逃げ惑う人々の絶叫と助けを求めて泣き喚く声……時々、おもしろいように捕まった人間がガメら…もとい、超巨大ワニガメやザリガニにパクパク、ムシャムシャと食べられている……。  だが、そんなこの世の終わりのような情景を前にしても、川端の公園からその様子を遠目に見守る俺にしてみれば、まったくもって恐怖というものが感じられない……。  むしろ、ここまでありえない光景だとまるで現実味がなく、なんだか夢か幻でも見ているような心持ちなのだ。  もっとも、その阿鼻叫喚の地獄を作り出してしまったそもそもの原因は、他の誰でもない、かく言う俺にあるのだけれども……。 「まさか、あれでこんな大事(おおごと)になるなんてな……」  それは一月ほど前の夜、俺が捨てたものから始まった――。
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