風が吹けば桶屋が呆ける

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 皆、フェンスに沿って一列に立ち並び、川に釣り糸を垂れる姿がこの数日ですっかり定着してしまった……以前の姿を知らなければ、ここが釣り堀だと思う者もいるかもしれない。  その内にパラソルや休憩用のテントなんかも立てられ始めたかと思えば、獲れたイワナを公園で焼いて食べる者、さらに進化してそれを売る屋台まで現れ、近隣住民の憩いの場だった公園が最早、お祭り会場状態だ(もっとも公園ではBBQ禁止だし、焼いた時の臭いに対するご近所からの苦情などもあって、駆けつけた警察によりすぐに取り締まられたが……)  しかし、イワナを求めるものはなにも人間ばかりではない……アオコの藻をプランクトンが、そのプランクトンをイワナが食したように、今度はそのイワナを食料とする者達が現れたのである。 「……あれ、これイワナじゃないよ、パパ」 「おお、それはブルーギルだ! あ、見ろ、あっちではバスが釣れてるぞ!」  休日にまた様子を見に行ってみると、釣りに来ていた小学校低学年くらいの男の子と父親の親子連れが、そんな会話を交わしているのが耳に聞こえてきた。  そちらを覗うと、父親の引き上げた釣り糸の先にはブルーギルが、その向こうのおっさんの竿にはブラックバスが食いついている。  そう……イワナが寄ってくる絶好の餌場に目をつけ、外来種の大型肉食魚がどこからともなく大挙して現れたのだ。 「なんか、新たな生態系ができ上がってるな……」  本来、清流にいるはずのイワナに、それを食らう外来魚……ふと気づけば、この天村川の生態系はすっかり以前と違うものに一変してしまっている。  釣り人にはうれしい変化だろうが、日本の自然環境にとっては大変に迷惑なことだ。  ……が、迷惑はそれに止まらない。 「うわっデカ! なんかまた珍しいのかかったけど……って、おい! ガーだぞこれ! アリゲーターガーだ!」 「……ん? うわああっ! み、みんな気を付けろ! ワニガメだ! ワニガメがいるぞ!」  ある日、釣り人達の間からそんな叫び声がちらほらと聞こえてくるようになった……。  すでに肉食外来魚がいるんだからいいとでも思ったのか? さらに巨大な外来魚アリゲーター・ガーや、もっと危険なワニガメなんかを飼えなくなって捨てに来るDQNが現れたのである。
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