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少し目を見開いてこちらを見てから、ふっと目を細めて叔父さんは微笑った。
「あゆちゃんは優しいな。お母さんには似なかったみたいだ」
「私までお母さんみたいに気の強い性格だったら、お父さんの胃にストレスで穴が空いちゃうから」
言って二人でくすくす笑ってからもう一度叔父さんの顔を見ると、今度はどこか悲しそうに遠くを見ていた。私の視線に気付くと困ったように笑って、
「……突然だけど、あゆちゃんは幽霊とかUFOとか河童とか、そういうの信じるほう?」
出し抜けにそんなことを訊いてきたものだから、私は一瞬ぽかんとしてしまった。
「え?……うーん、どれも『絶対いる!』とは言えないけど、完全に否定もできない、かな」
「そうか」
言って叔父さんは縁側の戸を少し大きく開けた。暗かった庭が、それで少し明るくなった。
「そういう類の話があるんだけど、聞くかい?」
縁側に腰掛けて、隣のスペースをぽんぽんと叩いて示しながら言う。私はこくんと頷いて、叔父さんの隣に座った。
雲の多い夜空の、片隅の細い月を見上げて、叔父さんは静かな声で話し始めた。
「実はね、僕達姉弟にはもう一人、弟がいるんだよ」
「えっ!? マジで!?」
突然の思いもよらない告白に、私は思わず大声を上げてしまった。そんな話、母からも祖父母からも聞いたことがない。
「全っ然知らなかった……」
呆然と呟く私に、叔父さんはごく淡い笑顔を浮かべた。
「それはそうだろうね。弟のことを覚えてるのは僕だけだから」
「……え……?」
さっきとは種類の違う、困惑を多分に含んだ驚き声を洩らす私に、叔父さんは訥々と語り出した。
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