誘惑のサンタ

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 男は隣に座ってきた。ちなみに私は起きたばかりなのでベッドの上だ。つまり私と男はベッドに腰掛けていると思っていただきたい。 「女性を愛し、女性のために生き、女性のために尽くす男。その名も、聖・ばんばらばんばんばん」  いつから、日本にはこのようなエロ気たっぷりなイケメンが増えたんだろう。 「漢字で蛮薔薇蛮蛮蛮と書きます」  昭和生まれの私の頭の中で、5人の色違い戦隊ヒーローが並んでエロ気イケメンの名前を暗唱していた。 「その…ゴレン…ばんばらさんはなにが目的でうちに?」 「そう急かさないで」  口元に人差指をもっていってシーッとゼスチュアー。  これが昼間で意識もはっきりしていたら非力なオバサンなりのコークスクリューパンチが炸裂するところなんだろうが、時計の針は午前2時。これは夢かもしれないと疑っているくらい覚醒していない。 「なんで黄色いんですか」  サンタの衣装は赤だろう。そこからなら聞いてもいいはずだ。 「赤は渡っちゃいけないけど。黄色は危険ながらも渡っちゃうだろ」  じっくりと、脳細胞が動き出すのを待つ。  エロ気イケメンが甘ったるい笑みを隣で浮かべている。 「すみません。私のミジンコ並みの脳みそではその言葉の意味を理解することができません」  エロ気イケメンのぷるっとした艶のある唇が「マジかよ」と動いた。     
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