誘惑のサンタ

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 聞き流す。私くらいの年齢になると悟りが開けるっていうか、お世辞とセクハラの違いくらいわかりすぎるくらいわかる、つもりだ。 「目をそらさないで」  全身に鳥肌がたつことを平気で口にすることができるのがエロ気イケメンの特権ではあるが、無理やりのアゴクイは条件反射でその手をひっぱたいても傷害罪にはあたらないだろう。 「寒気がするので口説くのやめてもらえますかね」 「怒ってるの?」  やっぱだめだ。我慢ならない。 「真横からロケットパーンチッ!」  なにがあっても他人に手を出してはいけない。という常識(?)の封印をいま解く。  私は子供の頃からいい大人にはなれないなと思っていたけれど、いい老人にも死ぬまでなれない気がしてきた。 「ごめん、気に障ったなら謝るよ」  鼻血を垂れ流しながらも微笑むことは諦めない。それがエロ気イケメンステータス。 「ちり紙、そこにあるから」  足元のテッシュボックスをアゴでさした。  たいして鼻血垂れていないのに、ものすごい勢いで引き抜くエロ気イケメン。 「もう帰ってもらえますか」 「じゃあ、僕があなたに出会えた記念に、なにかもらえないかな。飴ちゃんと札束以外で」  サンタなら、私に札束くれよ。 「ブラジャーとか、もう言わないから。なにか生活感のあるものを」     
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