誘惑のサンタ

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「オバンのくせに色気付いてんのかって言いたいんですか?」  何色着ようと私の勝手だろ。 「まさか。お似合いですよ。そんな歳には見えない」  すべての単語にセクハラ以上のものが込められている。しかもそれが口説き文句だと思い込んでいる。  こんな男が子供におもちゃを配り歩くのか。  いや、それはついでで、若い奥さんの部屋にも〈イケナイプレゼント〉を撒き散らすのではあるまいか。よい子のみんなに弟か妹のプレゼントあげちゃうんじゃなかろうか。 「全国の真面目なサンタに謝れ……」  あれ、いきなり視界が天井。 「あなたぐらいの歳のマダムの部屋にも何度か忍び込みましたが、どうもテンションあがらなかったんですよね。でも、ヤル気がでなかったのは年齢のせいじゃないようです」  ちょっと待て。  なんの話だ?  つーか、なんで押し倒されている? 「あなたは男にも、子供にも、姑にも、お母さん付き合いにも縛られていない。自由な人だ。自由は人を若く見せる」  いちいちぜんぜん嬉しくないんですが。 「いや、ほんと、マジ帰ってくれませんか」  絶体絶命ですが、ちょうどヒザが黄色サンタの股間にありますので、蹴り上げのカウントダウン10秒前です。 「嫌なの?」 「いやに決まってんでしょ」 「なんで?」     
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