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真っ赤に光る鼻のトナカイが息荒くこっちを睨みつけていました。
「いい加減にしろ! このマダムキラーが!」
窓ガラスが割れるような勢いでトナカイが喋った。
トナカイが喋るわけないが、ここまで非常識なことが起こるとそれもアリだと受け入れられた。
「もういいだろ、帰るぞ!」
相棒のトナカイはかなりのご立腹。まぁ、そうだろう。行く先々でこんなことをしていてはサンタ業界の赤っ恥だ。
「いいじゃないか、ご婦人も喜んでくれているし」
え? だれが喜んでいるって?
「相方が大変失礼な振る舞いをしました。申し訳ない」
常識あるトナカイだ。
「いえ、あなたのようなまともなパートナーがいて助かりました」
こうやって、善と悪のバランスは保たれているのだな。
「とても残念です。これからだったのに」
エロ気イケメンが割って入る。
ピンクのTシャツ渡したところで終わっているから。
「じゃ、帰るとするか」
エロ気イケメンはトナカイの背に飛び乗った。ソリではないのだな。
「今度会うときは、赤い服でくるよ」
イケメンを乗せたトナカイの体がふわっと浮いた。
「サンタになったら、子供のところにしか行きませんからね」
トナカイが叱りつけている。ということはもう彼は来ないということだ。
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