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「いいや。ワシは兄ちゃんに自販機横のゴミ箱にぶち込まれたんや」
「ええ、そんなバイオレンスなことしませんよ! ……って、え? 自販機横のゴミ箱ってもしかして」
「そう、ワシはあの日、捕まえていた鶴を逃がされ、挙句捨てられた……」
「トラばさみの方かい!」
なんてこった、助けた鶴じゃなくて捨てた罠が尋ねてくるなんて。
「兄ちゃん知ってるか? ワシらトラばさみはその危険性ゆえにこの国では使用が禁止されてる。おてんとさんの下では肩身が狭い」
なんだか本当のヤクザっぽいな。
「このままではいかんと思ったトラばさみ職人が捕獲力を保ちつつ、挟んだものを傷つけない絶妙な柔らかさを持たせたのがワシだったわけや」
時々見せる情けない部分はその絶妙な柔らかさとかいうものの影響だろうか。
「あの鶴を捕まえて新型トラばさみの性能を証明し、ワシらはシャバに戻れるはずやった……。それを兄ちゃんは、鶴を逃がした挙句、ごみ箱に捨ておった。お前らは社会に必要とされとらん、ゴミやってか、おぉ?」
再び近づいてきたヤクザが、ポケットから出した手のひらサイズのトラばさみでチェーンを破壊する!
「トラばさみ絶対そんな使い方しないでしょ! というかそんなこと言ってないですよ!」
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