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ここまで僅か十八年ではあるが、私は私の人生を愛している。
比較的裕福な家庭に生まれ、両親は愛情を持った適度な放任主義で私をのびのび育ててくれた。中学までは地元の公立校で多様な友人に囲まれ、高校は県内トップの私立高で、優秀な友人と部活動、勉学で切磋琢磨した。バレーボール部では高校から始めたメンバーが半分を占めながらも地区で3位、大学受験では現役で東京大学に合格した。高校3年生から付き合い始めた彼女も 同じ大学に合格し、共に順風満帆なキャンパスライフを送っている。
ここまでの私は、大きな挫折を経験することなく、立てた目標は概ねクリアしてきた。自慢できるほどの大成功はまだないが、常に、こうありたいと思う自分であった。
そして、大学に合格し、東京に出てきた私の世界は一気に広がった。初めて出会う人、もの。己の選択が、己の人生を決定づけるのだという実感が湧いた。なりたいもの、成し遂げたいことが、次々に浮かんできて、私は走り出したくてたまらなくなった。
東京での一人暮らしにも慣れ、様々な方面に出した手がそれぞれで手ごたえを掴み始めた頃、目が覚めると私は見慣れない部屋にいた。柔らかいベッドと、机が一つ。寝室のようだった。
友人の部屋に泊まることもあるが、こんな部屋は知らない。そもそも私は、昨夜は確かに自分の部屋で寝たはずだ。
身体を起こすと、何やら体が重い。部屋を見渡しても、見覚えのあるものはない。外にも、人の気配はなかった。
机の上には三通の手紙と、遮光ガラスの小瓶が置いてあるのを見つけた私は、その手紙の一つを手に取り、読み始めた。
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