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side.K
ベッドに大の字で寝転んだまま、天井に向けていた視線をゆっくり壁へと向けた。
中学時代のサッカー部のポスターが貼ってある。
先輩が描いてくれたやつだ。
いろんな動きの部員たちが画用紙いっぱいにレイアウトされてて、その真ん中にはゴールキーパー。
新入生の昇降口に掲示されたポスターを見かけた時、すげぇ上手くて驚いた。しかも俺、真ん中だし!
ちょっと照れくさかったけど、カッコ良く描いてくれててホントに嬉しかった。どうしても欲しくなっちゃって、掲示期間が終わってから顧問に頼んで譲り受けたのだ。
俺、あん時からもう先輩の描く絵が好きだったんだなぁ。
目を閉じると、はぁぁ〜〜〜〜っと長い溜め息が出た。
・・・先輩のこと忘れられんのかな。
くりっと丸い目にサラサラの髪。パッと見は柔らかい雰囲気だけど意外と頑固。いつも冷静に周りを見てて、すぐカッとなって突っ走る俺とは正反対だ。責任感があって自分に厳しいが、人には優しい。
絵を描いてる時の楽しそうな顔も、
建築デザインを学びたいと語ってくれた真剣な顔も、
俺のイノシシっぷりに呆れてる顔も、
しょうがないなぁって笑ってくれる顔も、
みんな愛おしかった。
「くっそ・・・」
あーーーぁ。こんなん忘れられるかよ。
だってもう先輩の声が聞きたい。
声聞きたいよ。
「うー・・・」
その時、枕元に投げ出していたスマホが鳴った。
ノロノロと手に取り画面を見ると、先輩からの着信を示している。
・・・なんか文句でも言われるんだろうか。さっき一方的に話して切っちゃったし。
こっちから告白しといて勝手に盛り上がって勝手に盛り下がって別れるとか、イノシシの極みだわ。
どうしよう、大嫌いとか言われたら俺もう生きていけないかも。
・・・けど文句でも何でもいい、から、もっかい先輩の声が聞きたい。
そもそも俺が悪いんだ、何を言われても甘んじて受け止めよう。そして謝ろう。
俺は覚悟を決めてむくっと起き上がり、画面に指を滑らせた。
「・・・もしもし、先輩?」
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