第1章

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世の中の匂わせ女子の気持ちもわからないことはない。 私だってどちらかといえば匂わせるタイプではあると思う。今までしたことはないけれど。 たぶん、不安なのだ。 こうやって私は幸せだとアピールしていないと。 もしくはライバルを牽制しているのか。 まあどちらにしても関わらないに越したことはない。 大抵そういう女は面倒で、中高生なら確実に恋愛のゴタゴタを巻き起こすタイプだ。 恋愛か勉強かくらいしか悩みのなかった女子高生なら多少そんなトラブルに巻き込まれてもよかろうけど、こちらはもう大人なので、そうも言っていられない。 人に嫌われるのも人を嫌うのも、意外と消耗するのだ。 激しく心を動かされるのは映画と小説だけでいい。 なんならそれさえも疲れる瞬間だってある。 伊達にマックで女子高生に引け目を感じるほど歳をとってはいないし、全てのことに図太くなれるほどおばちゃんでもない。 一通りSNSのチェックを済ませて、仕事中通知が溜まりに溜まったメッセージのアプリをようやく起動した。 SNSは気分としては一方通行のやりとりなので、なんの苦もなく開けるのに、相手が明確になった途端急に開くのが億劫になるのはどうしたものか。 公式アカウントとメルマガからの通知を消して、それでも残るメッセージを適当にタップしていく。 だいたいが大したことのないやりとりだった。 1日1通やりとりするかどうかの友人や、3日に1回くらいの気分が向いた日にだけ返信する友人、あとは来週ディナーに行く予定の女の子たち。 そして、 『明日何してる?』 ああ、そうか明日は金曜日だった。
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