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いつだったか、デパート専属のデザイナーから聞いた話が頭の中にいつまでもこびりついている。
広告のイラスト用に、社内にあるアトリエでモデルを勤めながらの雑談だった。寝椅子に横たわって物憂げに宙空を見よ、という指示に応じながら。
「指を耳元の髪に添えて、顎は少しこう…見下す感じで。靴とソックス留めは片方だけ外して……ああ、いいね! 実にいい!」
そうか? と思いつつ、反論するのも面倒でため息をつく。それもまた「いいね~!」と褒められるのだから意味がわからない。
「まあ、あんたたちがそれで稼げるってなら、なんでもいいよ……」
デザイナーは、手を動かしながら、ふと声の調子を改めた。
「社長が言ってたよ。しおんを見ていると、次から次へとアイデアが浮かぶんだって」
「……ふうん」
帝国劇場に足げく通うような奥方たちなら少年音楽隊にも興味を持つのではないかと踏んだ龍郷は、早速「今日は帝劇、明日は龍郷」というポスターを作らせた。
文言はただそれだけ。安売りの情報もなにも入らない代物だ。
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