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 興行師らしき小太りの男がユウを捕まえようと腕を振り上げているが、ユウは調子はずれの適当な歌を歌いながら狭い舞台袖を駆け回っている。待機していた少年たちは不愉快そうに顔をしかめる者、嘲るように口の端を歪める者、いろいろだ。同じ子供同士、という親しみはそのどこにもない。異形の穢らわしいものに触れている。そんな考えだけが透けて見える〈普通の〉子供。  ――くそ、ユウの奴。  しおんは不快さをぐっと噛み殺しながら、ハンチングを目深に被りなおした。 「行くぞ、ユ」 「おい、構うことはない、バケツに水だ。早くしろ」  「は? ――」  支配人は水をかけてユウを追い払おうとしているようだった。まるで犬猫のように。  嘘だろ。  そう思ったときにはもう、とっさに駆け出していた。
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