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海に沈んでいる
目映い水面を眺めていると、深い紺碧に吸い込まれそうだった。キラキラとして誘っているようなのに、覗くと底はこれっぽっちも見えやしない海。
紗英はそっと瞼を下ろした。それでも、海の青さは眩しくてクラクラする。
一人でこの海が見渡せる堤防に来ると、絶対に後悔する羽目になるのに、それでもついつい一人で来てしまう。
母が弟を連れて海へと沈んだその理由を、答えなんて分からない理由を、いつもここに来て考えてしまうから一人では来たくない。
どんなに思い描いても、母のその時の心情を知ることなんてできないし、知ったところで理解なんてできないかもしれないのに。
答えは海に沈んでいて、誰も拾うことのできないところにある。
そうでしょ? お母さん。
私は問う。記憶にもない母の姿を海に見て、何度も問うけれど答えはいつまで経っても返ってこない。
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