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男は本気で聞いているのだろうか。仕事先まで調べあげているのに、知らないはずない気もするが……。
「幼なじみです」
「それだけか?」
「付き合っていましたけど」
なるほどねぇなんて口では言うが、全く感情が籠っていないところを見ると知っていたのか、察しはついていたのだろう。口の周りを指で擦るとその指は髭でも見つけたのか、同じ場所をなぞりだす。
「んー、俺は見た通り真っ黒な人間な訳だ。ゲームで言うところの魔王側。んで、君はどうやら真っ白しろ。英雄側だな。いいねぇ、日の当たる場所で生きてきたヤツは。キラキラしててムカつくわ」
男は勝手にそんな話を始める。言おうとしていることはまぁ分かるので壱は黙って聞いていた。
「今、紗英は花屋で働いてるよ。ちなみに紗英は白のまま。だけど働いているって言う花屋は、俺らと繋がってる訳よ。場所柄、ああ歌舞伎町あたりね。後ろ楯みたいのはさ、必要なんだなぁ。だから花屋は白に近いグレーだな。悪いことはしてねぇからな。ただ、持ちつ持たれつってヤツ。俺が花を大量に買うような奴等を紹介する。その代わり、花屋は訳ありな人間を引き受けるってわけだ。紗英みたいな女とかな」
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