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言い終えると男はスマホを取り出して、なにやら操作をしだす。すると間もなく壱のスマホにメールが届く。地図付の住所だった。
「早くいきなよ。紗英はそろそろ仕事から帰ってくるぞ。何もない部屋に愕然として、荷物を持って街を彷徨うかもなぁ」
壱は男をひと睨みすると、テーブルの上にある鍵を取った。急展開だが、男は冗談を言っている感じではない。慌てて掴んだコートとリュック。
「三度目はないぞ」
男は座ったまま壱を見上げて笑う。けれど、目は全く笑ってはいなかった。
壱はもう男を見ていなかった。サッとコートを羽織ると、リュックを背負って走り出す。次こそはサエを捕まえなければ。
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