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「でもさ、悪いし」
サエが壱の元へと戻ってきたので、温めたお弁当を手渡す。壱は自分用のクラムチャウダーのカップスープとお湯が沸いたポットを持ってサエの後に手にして続く。
「早く食おう、腹へった」
壱は話題を変える。悪いとか、悪くないとか、とにかく今はやめてくれ。やっと戻って来たんだから、空気が変わるような話はしたくない。
二人で弁当をどちらがどっちを食べるか目線で会話をし、サエが幕の内を選ぶ。壱が残った方を開け始めると「私には多いから食べてね」とサエがご飯を半分蓋に乗せ、エビフライとかまぼこと……
「サエが食う分無くなるから」
「だっていっちゃんエビフライ好きでしょ」
「じゃあ、とり肉あげるからトレード」
「んー、私フルーツ食べたい」
だから買ってきたんだよ。と言いながらカップをサエの方へと押しやる。サエは微かに笑みを浮かべて、ちょこんと頭を下げた。そして、とり肉は要らないと自分の所に置かれないようにお弁当を隠す。
「ちょっと痩せた?」
「いっちゃんこそ」
「俺は社会人になって運動しなくなったせい。痩せたと言うより筋肉が落ちた」
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