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紗英は何も言えなかった。ただ黙って話を聞いていた。桃田さんが話終わるのを待って、確認だけする。
「じゃあ、石田さんは警察に?」
「ん? それも聞いてない? 自主したのは確かだよ。そのうち警察が話を聞きに紗英ちゃんのところにも来るんじゃない?」
はぁ……。と、曖昧な返事をしてから、また床に落ちた葉やら枝を集め始める。
「で、住む場所とかどうした?」
ぼんやりとしていた紗英が弾かれるように顔だけ上げた。桃田さんも今は紗英を見下ろしていたから、二人の視線がぶつかった。
「桃田さん、私住む場所を探さなくちゃならなくて……」
「あー、そうなるか。あては?さっきのイケメン幼なじみはなんなの?」
ちょっとムッとした紗英に気がついた桃田さんは「幼なじみだよな。うん」と肯定してみたりする。
「本物の幼なじみです」
「マジか。だって連絡先とか頑なに話さなかったし、昔の話しとか今までしなかったのに、急に幼なじみ?」
「どうやったかわかりませんけど、石田さんが連絡とったみたいで……昨日五年ぶりに会いました」
桃田さんは選別し終わったバラを箱に入れ始めた。高級ブティックに売るのだ。ブティックではプレゼント包装した時などに使ったりするらしい。
「ふーん。まぁ、なら尚更そこに居たらいいんじゃない?」
軽く言う桃田さんに紗英はため息をついた。
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