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なぜか宣言するように言い放つから不思議に感じながらも「よろしく?」と返す。サエは怒っているようにも見えたが、壱はとりあえずサエとのこれからがまだしっかり繋がったと満足していた。
それから二人は並んで壱の作ったカレーを食べた。不味くはないが決して美味しくないカレー。サエ曰く、煮込みが足らないらしい。そう言われるとあまり煮込んでいないかもしれない。
「誰かが作ってくれた物ってさ」
「ん」
「美味しいね、いっちゃん。お店で食べてもそう思うけど、知っている人が作ってくれた物を食べるのって……久しぶり」
大きなじゃがいもをスプーンで二つに割ったサエはシャクっと音がしたのを聞いて、柔らかな周りだけスプーンで取り口に運んでいた。確かに火の通りがまだまだらしい。
「いっちゃんのお母さん……お料理上手だったなぁ」
「食いに行く? 喜ぶよ」
あの日血相を変えて飛び出したのは壱だけではなかった。壱の家族もみんなサエを心配して探し回ったし、母はサエの父に詰めよって抗議していた。
『あんなに寂しがり屋のサエちゃんを、どうして一人にするんですか!』
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