決意

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 紗英は馴染み始めた温かい部屋で、いっちゃんとのラインのやり取りを読み返していた。ベッドの上はエアコンの温かい風が良く当たり、心地よいが肌が乾く。 『明日休みだからいっちゃんの仕事が終わりそうな時間に作ったおかず持っていくよ』 『家で作ればいいのに』 『だってそっち狭いし、こっちの方が広いんだもん』  なんて返したが、本当は極力いっちゃんの家に滞在することを控えようと思っていた。  だって、いっちゃんにはきっと彼女が居るから。そう思うと、立てていた膝を抱え込んだ。寂しいけど別れてなんて言える立場ではない。それにはっきりと彼女の話を聞いてしまったら、いっちゃんの家にはますます行きにくくなってしまう。"彼女"かもしれない人物が、いっちゃんには"いる"のかもしれない。ズルいけれど、曖昧さをそのままにしておく。  
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