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本当は料理を教わるのが約束だった。しかし、話してみると休みが全く合わないので、サエが作ってくれた物を持ってくることで話がついた。
さすがに悪いとは思ったが、今はなにがなんでも繋ぎ止めておきたかったので、こんな形になってしまった。
差し出した数枚の千円札を暫く見ていたサエは、諦めたように受け取る。
「しっかり渡した方がまた頼みやすいし、まさかこんな売り物みたいなのがくるなんて思ってなかったからマジで嬉しい」
サエは受け取った金を財布にしまいながら「この数年で勉強したの。家庭的な味とか分からないから、本買って。でも、キャベツとベーコンのはいっちゃんのお母さんが作っていたのを思い出して作ったんだよ」と言い、最後に照れたように似てるかわからないけどとはにかんでみせた。
どれ? と問うと、積み重ねたタッパーを一つ一つ確認してから、三つ目で引き当てて、蓋を開けてみせる。なるほど、見た目は完璧、母が作ったものと違わない。
細切りにしたキャベツにブロックで買ってきたベーコンを長方形になるよう厚めに切って、コーンを追加しブラックペッパーと醤油で味付けしてある炒め物。
壱もサエもこの炒め物が好きで、夕飯に出たら先を争うように食べた記憶がある。
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