決意

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 今日は休みだったから、残ったおかずを家にある皿に移してラップをかけていく作業。それから、サエが持ってきたピンクの蓋がついたタッパーを洗っていく。  そう言えば母が、近所の人からこうやって何かをおすそ分けして貰た時、空のまま返すのは失礼なのよと話していたっけ。だからと言って、カレーしか作れない壱には礼儀を思い出したところで無理な話なのだが。  洗い終えたタッパーを丁寧に拭いていくと、スタッグ出来るらしいので重ねていく。サエが惣菜を入れてきた紙袋に洗い終わったタッパーを戻す。 コンビニで何か……サエが好きそうなものでも買って、入れておくのはどうだろうなどと考えていると電話が鳴る。久しぶりに聞いたこの着信音は…… 「もしもし? ああ、なんかあれだな……久しぶり。ん、今から? 良いけど」  電話で話しながらテレビの横に置いてあるマニュキュアの小瓶が目に留まる。休日だったから、髪は乱れたまま放置しておいたが、髭も伸びているしシャワーに入ったほうが良さそうだ。 「じゃあ、勝手に上がってて。俺シャワー入りたいから。いいよ、わかった」  スマホを置くと、着替えを選んでさっさとシャワーを浴びに行った。シンと静まり返った部屋の中に、夕暮れの柔らかい光が差し込んできていた。  
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