決意

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 紗英は家とは方向の違う電車に乗って夕暮れの街を車窓から眺めていた。一番端の座席に座り、首をくるっと回して見ていたものだから扉の前にいる男性が紗英の視線を感じたのか、少しだけ横にずれていた。  いっちゃんの家に作った総菜を持っていった時、いっちゃんはとても嬉しそうにしてくれた。いっちゃんが喜んでくれることは紗英にとっても嬉しい事だと改めて実感する。  それに……見下ろしたいっちゃんの視線が紗英の口許を彷徨った時、実はかなりドキドキとしていた。結局いっちゃんは目を閉じて紗英の作ったものを美味しそうに食べて背を向けてしまったけれど。  彼女が居るからきっとしなかったんだな。紗英はびっくりするほど落胆していたし、恥ずかしいくらいいっちゃんの唇が自分の元へと降りてくることを期待していた。
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