決意

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 そう言えば、小さい時からいっちゃんが手を握ってくれようとすると嬉しくて、握ってくれなかったりしたらやはりがっかりしていたことを思い出した。初めてキスした時、初めていっちゃんが胸に引き寄せて抱きしめてくれた時、全部期待していたし本当に嬉しかったんだ。だって全部しっかりと覚えているのだから。  付き合っている時は恋愛感情なんて分からないと思っていたけれど、それは今考えるとごく自然にいっちゃんを好きになって、当たり前のように恋愛感情を抱いていたからかもしれない。  だって私……、幼稚園の時にいっちゃんが違う女の子と手を繋いでいるのを見て、内心不貞腐れていたんだもん。  紗英は小さかった自分を思い出して、口許が緩んでしまい、咄嗟に咳をするふりをした。電車の乗客は誰も見て居ないのに、一人慌ててちょっとだけ照れくさい。  いつだって、いっちゃんに手を握って欲しかったし、一番優しくしてほしかった。それってきっと、ただの独占欲じゃなかったんだろうな。  えっと……そうそう浅子さんとのツーショット写真だって、実は怒っていたし悔しかった。あの頃は自分の気持ちに素直になれなかったから、どうして怒っていたのかも自分自身理解していないふりをしていた気がする。  
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