200人が本棚に入れています
本棚に追加
/187ページ
電車のドアにもたれかかっていた男性が場所を変えたので、西日が真っ直ぐサエの顔を照らしだした。あまりの眩しさに顔を背けて、自分の膝を見た。
あの頃、いっちゃんに劣等感を抱いていたことも、気が付かないふりをしていた。だってずっと隣にいたいっちゃんなのに、ある日を境に自分はなんて劣った人間なのだと感じ、あまりの違いに狼狽え怯えたのだ。
わかっていたんだ。いっちゃんはいつも明るくて、楽しくて、スポーツも出来て、勉強だってできた。紗英は自分が暗いことも、楽しい話ができないことも、スポーツも人並みで、勉強に至ってはいっちゃんの足元にも及ばないことを知っていた。それでも傍に居たかった。いっちゃんならずっと一緒に居てくれると信じていたのに、いついっちゃんに見合う女の子が現れ、その子の元へと行ってしまうか不安だった。
本当に……いつも選んで貰う事ばかり考えていて、自分じゃ何一つ行動できなかった。うじうじしたあげく最後には、自らいっちゃんを裏切って逃げてしまったのだ。
眩しかったんだ、いっちゃん。でも……それって自分じゃ何の努力もしなかったからますますそう見えたんだよね。
最初のコメントを投稿しよう!