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焦って駆け降りていた階段の踊場で足の速度を緩めた。
うん、大丈夫。私達はただの幼なじみだもん。
言い聞かせる度に胸がチクチク痛むけど、何度も繰り返してきた通り、自業自得。隣に居られなくてもいい。いっちゃんの近くに居られたらそれでいいと決めたのだ。
急に重くなった足は、靴底が何かに引っ張られているかのように持ち上げるのが難儀だ。それでも足元を見つめて、一段一段階段を降りていく。
帰ったら、謝罪のメッセージをしなくちゃ。急に行った私が悪いんだから。
これからもいっちゃんの近くに居るためには、我慢だって必要だし、忍耐力をつけて、なによりもっと大人にならなきゃ。
紗英は綺麗に整えられた爪や、控えめながらきっちり施されたメイク、柔らかな表情を思い出していた。
大人かぁ。
自分のデニム姿や悲しいほど童顔な造りを思い返すと、大きなため息を吐いた。
短い間に日は落ちていて、行きにはついていなかった街灯が灯っている。暗くてよかった。私は今きっとひどい顔をしている。紗英はせめて背筋だけでも伸ばそうと、きゅっと身体を伸ばして歩いていく。
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