決意

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 心の内を読まれて、なおかつ悪いところを指摘されていた。でも、それは亜由が言うなら確かなのだと壱は感じていた。ずっと一緒に居た亜由だ。壱のことはよく知っているし、きっとそう言うことが理由で距離ができていったのだろうから。  だからと言って、久しぶりに来た亜由を置いて、サエを追いかけていいのか……。 「いいってば。早く行きなよ。合鍵はポストに放り込んでおくから。壱はね、出足が遅い!」  また思っていることを読まれて苦笑するしかない。  壱は頭にかかっていたタオルでごしごしと髪を荒く拭いてから、それを足元に落としてテーブルに置いておいた財布とスマホを掴んだ。すると、亜由が身体を伸ばしてテレビの横に置いてあった家の鍵を掴んで、壱の方へと放り投げた。慌ててキャッチすると、思いがけない亜由の思いやりにサンキュと短く伝える。  テレビの横にずっと置いてあったマニュキュアの小瓶は既になくなっていた。あるのが普通になり馴染んでいたから、そこだけ微かな違和感。いや、喪失感か。  鍵を握り閉めると「亜由、ありがと。連絡するよ。相談でもなんでも乗る」と伝えるとまた亜由に笑われた。 「はいはい。良いから行って」
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