決意

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「お冷ここに置きますね」  グラスを置く店主らしき男性に軽く頭を下げて「ウィンナーコーヒーを二つ」とサエの顔を見ながら注文し、サエも同意の意味を込めて頷いた。店主はエプロンからペンと伝票を取り出すとさらさらと注文を書いて「お待ちください」と去って行った。  壱は自分の手元にあったグラスを掴み、意味もなく氷を回転させてから、水に口をつけた。寒いが喉は渇いていた。シャワーを浴びて水分をとろうとしたが、結局飲まずに出てきていた。 「俺はさ……、サエにはやっぱりずっと隣にいてほしいよ。他の誰かになんかサエを任せられないし、サエは……あー、ちょっとクサイこと言うけどいい?」  恥ずかしさを紛らわしたくて、真剣に耳を傾けているサエに同意を求めたりする。もちろんサエは拒否などせず、聞きたいと答えた。 「小さい時から、サエは俺のものだと思ってたんだ。だから、知らない大人にサエをとられたって知った時は、正直色んなもんが崩れ去った」  そこで再び口にグラスをつけて、水をガブガブの飲み干して、ふぅと息を吐いた。サエはテーブルの上に置いた手を組んで、それをじっと見つめていた。 「でも、かえって良かったのかもしれないと思ってる」  意外な言葉だったようで、塞ぎ気味だったサエの表情が驚きに変わった。
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