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壱が財布を取り上げて、明細書を掴んだ。
「違った。俺たちはつきあってなかった。今から付き合うんだった」
「だよねー。初めまして大人のいっちゃん。そう言えば大人の空気は作れるようになった?」
「さあ? それさ、ずっと思ってたんだけど」
「うん」
「エッチしたいですって言った方がかっこよくない?」
「えー」
認めないサエに壱が眉の片方だけ上げると、隣に並んだサエの耳元まで顔を下げていって。そして囁く。
「今夜、サエをください」
ボッと火がついたように頬が赤く染まったサエの顔を見て、壱は満足して笑う。
「ほら」
サエはそんな壱を押しやってプイっと顔を背ける。
「いっちゃんの馬鹿。ホント馬鹿」
耳まで赤いサエの後姿を追って行く。二人は会計を済ませると、心地好い店内から出て、寒い外気に身を寄せながら手を繋いで夜の街を歩いて行った。
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