答えは海に沈んでいる

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「桃田さんがね、桜好きなんだよ。あ、前に働いていた花屋さんの店長」  紗英は冬の間に五年勤めた花屋を辞めていた。理由はいっちゃんと時間が合わないことが一番大きい。でも紗英一人の力で辞めた訳ではなく、男前な女子 林さんの行動力の賜物と言っていい。紗英だけだったら、悩むだけ悩んで言い出せなかっただろう。 「紗英ちゃんさぁ。桃田には私から言ってあげるから、あんたはもっとのほほんとした街に行きなよ。今までは石田のオッサンのお陰で平和に暮らせてただろうけど、この街はあんたには向かないからさ」 「でも……」  渋るには理由があった。花屋は忙しく人手不足なのだ。しかも身元を明かさない紗英を雇ってくれた恩もある。辞めたいからと言っておいそれと辞めるわけにはいかない。 「おい、桃田!」  林さんは紗英が渋っているにも関わらず、店の奥で伝票整理をしていた桃田さんに呼び掛ける。 「『すいません、桃田さん』だろ!」 「なんでもいいじゃん。あんたさ、調布あたりの花屋に知り合い居ない?紗英ちゃんの新しい働き口」 「くそ忙しいのに掛け持ちとか無理だろ」 「バカだな桃田。ここは辞めるんだよ」
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