201人が本棚に入れています
本棚に追加
/187ページ
「弱くてごめんね」
「うちに来るのだって勇気がいるんだろ? ラスボスは日を改めていけばいいよ。逃げないからさ」
幾分気落ちしていたのに、いっちゃんが父をラスボスなんてふざけるから、少しだけ気持ちが和らいだ。でも前よりずっと、出来る限り早く会って、さっぱりしてしまいたいと言う気持ちが強くなっているのは確かだった。
「ほら、そんなこと言ってる間に中ボスが待つ我が家に着いた」
車が駐車スペースに滑り込むように入って行って停車した。エンジンを切ったいっちゃんが胸の前でポンと手を打つので、紗英がびくっと体を震わせた。
「緊張しすぎ。相手は俺の母さんだぞ? チョコレートケーキ食ってるときだけ鬼の形相だけど、サエに関してだけはいつでもデレデレじゃん」
確かにおばさんはいつでも紗英を可愛がってくれた。
男の子二人より紗英ちゃんと一緒にお買い物するのが楽しいわねなんて言いながら、よくショッピングに連れて行ってくれたのだ。そこでいっちゃん達には内緒だと言い、紗英にクレープやケーキをご馳走してくれたりもしていた。
可愛がって貰っていた自覚はもちろんあった。だからこそ、何も言わずに逃げ出した紗英は申し訳なくて消えてなくなりたいと思ったりする。
最初のコメントを投稿しよう!