答えは海に沈んでいる

7/15

201人が本棚に入れています
本棚に追加
/187ページ
 抱きしめられた紗英も思わず目の周りが熱くなって、そして一気に涙腺が崩壊していくのを感じていた。堰き止められていたダムが崩れ落ち、ドバっとあふれてくる涙。 「サエちゃん! ずっと会いたかった……よかった、サエちゃん。また会えて良かった」  おばさんの力強い抱擁に紗英もいつの間にか応えて、背中に手を回してぎゅっと抱き着いていた。いっちゃんのお母さんの身体はとても熱くて、そして抱きしめてくれた腕は力強かった。 「おばさん……ごめんな……さい。おばさん……ごめ」  口を開けたら頬を伝って下りてきた涙が口の中へと入り込んでしょっぱい。 いいんだよ、いいんだよ。繰り返しながら背中を擦ってくれるおばさんの声は擦れていた。おばさんが泣いている。人目をはばからずに泣いてくれている。そして紗英も溢れる涙を抑えられないで、子供のように声を上げて泣いていた。  私にもこんな風に泣いてくれる人が居る。私にもこんな風に抱き寄せてくれる人が居た。  込み上げてくる容赦のない感動は、表に出る時に涙へと変わり、溢れて溢れてボロボロと落ちていった。  おばさんから、ずっと好んで付けていると教えて貰った香水の香りがした。憧れたお母さんの匂い。戻ってきたんだと紗英は改めて感じていた。いっちゃんのお母さんの匂い。甘くて懐かしい。  顔を上げるとおばさんが見下ろしていて泣きながら笑っている。次にそっと視線を移すといっちゃんが口角を小さく上げて頷いてくれた。
/187ページ

最初のコメントを投稿しよう!

201人が本棚に入れています
本棚に追加