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この五年間、二度と会えないかもしれないと何度も覚悟した。もしかしたら、サエも海に沈んだのではないかと不安を覚えたりもした。そんなことをサエがするわけがないと、どんなに信じようとしても、不安を完全に払拭することは出来なかった。
なぜなら、サエが居なかったから。行方知れずになった相手に問いかけても答えなど得られない。答えが返ってこないというのは不安を増長させるし、なにより孤独だった。
これがサエの日常だったのだと身をもって実感し、もっとできたことがあったのではないかと自問自答して悶々としたが……。
「いっちゃん。見た? ポポロが尻尾振ってたよ」
サエは首をくるっと回して尾崎さんの家の飼い犬を見て喜んだりしている。昔からサエのお気に入りのモフモフしたモップみたいな雑種犬だ。
「ああ、ポポロでっかくなったよな」
成長と言う意味ではなくて横に膨らんだポポロのことを言ったら、サエが声を上げて笑っていた。
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