答えは海に沈んでいる

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 何か吹っ切れたらしいサエは高校時代よりもずっと明るくなった。よく話し、よく笑う。表情も遥かに豊かになった。  辛かった日々はお互い様か。今が良いならそれもあり。いや、前よりサエが楽しそうならそれが一番。壱は空気が抜けて回転が遅い自転車のペダルを漕いで、サエの横に並んだ。二人は昔のように他愛もない話をしながら海を目指していく。  そうしてやって来た防波堤。防波堤の横にある駐車場に自転車を停める。かつてここでサエの母親が車を乗り捨てて、サエすら置いて、旅立ったところだ。  サエはたったったと駆け出すと防波堤の先端に向かう。その後をゆっくりと壱がついていく。    ここはいつもほとんど人が居ない。いるのはカラスやカモメくらいなものだ。陸に向けて海風が上がってきている。平地になってからタイヤの空気が抜けた自転車を頑張って漕いだので、汗ばんだ体に風が心地良い。  磯の香りを嗅ぐと、いつでも壱はこの防波堤を思い出す。今日は快晴。水面は目を向けているのが辛いくらい眩くて、歩きながら空を仰いだりした。 「いっちゃん? 白いカラス居た?」  見上げていた壱にサエが声を掛ける。
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